大正末のキャンプ用手提げ灯の窓が、ガラスではなく磨き雲母である説明をを聞いて、「仕事で雲母の粉を使う」という受け答えに、一瞬「あれ?」という思いがよぎったことに、合点がいきました。江戸後期の時計『正時版符天機』のつくりや、烏口(からすぐち)での淡墨の線に目を留めるなど、技術者としての感性が身に付いているので、お願いを致しました。
江戸期の諸道具の美しさに含まれている、思いやりの心から発した知恵の数々や、昔の灯し火と電灯の光で見る“物との相性”に目を向けてもらいたいと。
例えば、和綴本 (わとじぼん)を灯し火で見る時と電気の光で見た違い。布、江戸小紋、板目など。伝統的な床の間の水墨画を灯し火でよく見て、その幽玄な味わいの素晴らしさを。
最後に、何年か後に、ご自分が中心で仕上げた建築や作品が出来たら、必ず飛んでいくから連絡を下さるよう、楽しみに待つことを告げてお別れしたのが、3時間半ののちでした。
Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄

