2005年09月30日

金曜コラム

箱根口門.gif ギャラリーと城下町
 戦国時代、関八州に覇を唱えた後北条氏の居城として知られた小田原城。そして、江戸時代には、東海道五十三次の9番目の宿駅として大名の参勤交代や旅人で賑わった小田原宿。
 歴史を感じる町・小田原にふさわしい「ギャラリー箱根口門」(主宰・杉山博久)が!28日、城郭の遺構・三の丸土塁が残る小田原市南町にオープン。記念展「浮世絵師と歩く五宿の旅」が開かれている。
 ギャラリーの名前は、小田原城三の丸への入り口「箱根口門」からつけた。道を挟んだ東には、苔むした門跡櫓(やぐら)の石垣が残っている。
 室内には、元県立小田原城内高校教諭で前南足柄市郷土資料館長の杉山さんが30代から収集した数多い浮世絵の中から17枚を展示。
 広重の出世作となった保永堂出版東海道のうち、川を渡る駕籠(かご)と遠く小田原城の石垣と櫓、宿場の家並みを描いた「小田原・酒匂川」、切り立った山容が特徴の「箱根・湖水図」、美人襟(えり)洗いの図で知られる英泉の「大磯駅」など平塚宿から三島宿までの5宿を飾り、心のお休み処として人気を集めている。解説書を手にすれば、江戸のスローライフが100倍楽しめる。
 城下町の風情あふれる「ギャラリー箱根口門」、ここにあり。       (粒)



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2005年09月28日

小田原提灯(最終編)

小田原提灯最終.jpg 図には起こしてありませんが、ブリキをパンチングにて打抜き、プレスにて絞り上げ、天地を形作った大量生産品ではありますが、予備ロウソク入れまで付いたなかなか味のあるものも、たくさん残っていました。需要の増大と活躍が見えるようです。
 最後になりましたが、「新潟縣」と墨書きされた、杉材の風情ある提灯が1点ございます。さすが杉の産地での作りと思われる、良質の材料を活かし、薄くコンパクトで華奢な感さえ抱かせるものの、しっかりと作りは軽やかながら風格を持った小型木製の逸品です。
 原点の土産提灯を見たわけではないのに、煤けて黒光りした天箱を見つめていると、『魔除け提灯』と呼ばれた頃のものを見ているのではないかという錯覚に襲われます。
 幅12p、長さ28p、縮めた厚さ4.5p、大正期〜昭和初期。
             Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月26日

小田原提灯(その6)

小田原提灯6.jpg 旅に活かされた頃とすっかり様変わりをした明治大正期ともなりますと、そのコンパクト携帯の便利さだけではなく、更なる使いやすさや、低廉を図れる材料や技術の進歩は、庶民の経済活動の広がりや活発化に伴い、日常使いやちょっとした所用などにも、大いに使われたことが偲ばれる、たくさんの品が残されておりました。
 図は、しっかりしたバネによって、金属で出来た箱の天地が押し広げられ、3本の鎖によって、必要な寸法が確保されます。
 吊り下げてのみ使用できたものが、棚に置いても使えることになりました。
 倉庫や機織場(はたおりば)や水車小屋での点検整備や油さしなど、コンパクトなだけに好都合だったでしょう。火袋を作る覆いの布にしっかりと油の染み込んだものが見受けられます。
        Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月23日

金曜コラム

 案山子の愁い
案山子.gif ♪山田のな〜か〜の 一本足のかかしぃ〜と歌われる童謡「案山子(かかし)」。
 遺伝子組み換え食品や地産地消が話題になり「食の安全・安心」が求められている今、実りの秋を代表する案山子が全国の田んぼで元気よく復活している。
 神奈川県西部の米どころ足柄平野では、地域の活性化を目指し「案山子コンテスト」などが開かれている。
 上大井駅構内の日除けのひょうたん棚が旧国鉄の時刻表を飾った大井町には、郵政解散で自民党を歴史的な勝利に導いた小泉純一郎首相の似顔絵を町の特産ひょうたんに描いたものなど20数体が登場。
 駅前開発と企業誘致に成功し児童数が増え続け、平成22年度までに新しい小学校の建設を迫られている開成町。元気を象徴する野球少年の「攻・走・守」や100bのロング手巻き寿司づくりに挑戦する様子、ごみの分別を呼びかける「ピカチュー」もあり、人気を集めている。=写真=。
 日本の農業を見つめてきた案山子の顔は「へのへのもへじ」から、マツケンやヨン様など個性的になり、スズメたちを驚かせているに違いない。
 減反政策による農業従事者の減少、レジャー施設や住宅に変わる田畑に案山子の愁いは深くなるばかりだ。                    (粒)




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2005年09月21日

小田原提灯(その5続き)

小田原提灯5続.jpg 艶やかな竹作りのロウソク入れから下がる小さな信玄袋も、江戸茶で染め上げられた小紋共々、愛くるしいものです。出てきた例の提灯がこれまたコンパクト。幅9.5p、厚さ1.5p、両の手にすっぽりと納まる、驚くべきものです。
 原点の杉材から大幅なる進歩変遷、と申しても良いものかどうか。
 時折、手に取って見ますと、初期の「強い見方としての願い」が、おやじの言葉になって聞こえてくるようです。明治25年生まれの父が、爺さんから聞かされた薄ら憶えを、自分なりに言った言葉に、「箱根の懐深くに建つ寺院の霊木だもん、天下の険は自分の庭みてえなもんだ、守ってくれるさ。」「かまどの上に祀る荒神さんみてえなもんさ、持ち運びできる灯火は有難えもんだ、狸や狐は近寄れねえよ。」などが思い浮かびます。
 自然に対する深い恐れや、火に向かっての感謝の心が、『携帯便利な魔除け提灯』という概念から、材質が何であれ、袂提灯や懐提灯、更には中型の箱提灯までをも含めて、“小田原提灯”の呼び名に収斂(しゅうれん)していったのではないでしょうか。
                 Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月19日

小田原提灯(その5)

小田原提灯5.jpg 究極の小田原提灯ではないかと言われているものです。広重描くところの五十三次でも名だたる宿場町藤沢に温存されていたものです。
 言っている人たちとは、古民具や古美術品をなりわいとしている方々、蒐集家、集めることは少ないものの、機会がありますと手に取り、色・艶・手触りを楽しみ、昔の道具を味わい偲ぶ、趣味人とでも申すべき、意外と多いところの人達なのです。
 天地の箱や蓋は、真鍮(しんちゅう)という材質です。幕末のものと思われます。
 取っ手も、厚みを減らす為、上部ではなく上蓋の両サイドに付けられ、倒すと上蓋の横腹にピタリと付く状態になり、厚みに係わりが無い。
 更にロウソクを立てる芯の針に至っては、なんと倒れるのです。江戸期に多く使用された挟箱(はさみばこ)の、担ぐ木の柄から抜け落ちぬ為のストッパーのからくりが、極めて小型に仕掛けられていたのです。知恵の粋と申すべきものでしょうか。
                     Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月16日

金曜コラム

酔芙蓉.gif 一日花・酔芙蓉
 白から淡いピンク、そして紅色へと日に3度、お色直しをする一日花・酔芙蓉(すいふよう)。
 四季の花々で地域おこしを進める「あしがら花紀行」の初秋を彩る酔芙蓉が、南足柄市千津島の酔芙蓉農道で咲き出した。
 稲穂が黄金色に輝き始めたのどかな田園地帯の中、700株の酔芙蓉と赤と白の芙蓉100株が植えられた「酔芙蓉農道」が、約1`にわたって続く。その中を、県内外から訪れる「歩け歩けの会」の人たちが、花をバックに写真を撮る姿があちらこちらで見られる。
 酔芙蓉……越中八尾を舞台にした高橋治『風の盆恋歌』の一節を思い出す。
 かつて公社と呼ばれた通信会社に勤めていた20数年前、隆ちゃんと呼ぶ友人と、9月1日から3日間だけのまつり「越中八尾〜おわら風の盆〜」を訪ねた。
 車で長野県松本から標高1790bの安房峠を越えた。岐阜県上宝村を流れる川に湧き出る野天温泉で疲れを癒しながら旅を続けた。
 日が落ちた頃、坂の町とも水音の町ともいわれる八尾に着いた。深くかぶった笠に揃いの着物の女たちと、股引姿の男たちが、情感を訴えるような胡弓の音に合わせ、古い街並みを流してくる。踊り手の周りでは、アマチュアカメラマンがシャッターを切っていた。セピア色になった20数年前の思い出だ。       (粒)



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2005年09月14日

小田原提灯(その4)

小田原提灯4.jpg
 家内の母親の里で、道の拡幅で土蔵を取り壊す、活用できる物を取りにいらっしゃいとの一報に、小躍りしながら出掛けたのは、15年ばかり前。
 既に中井町の重要文化財に指定されている文政8年の年記が入った『正時版符天機』と共に持ち帰った、文化文政期の木版本200冊ばかりと一緒に長持から現れたのが、馬上提灯であり、この「こより」で出来た小田原提灯であり、その懐に抱かれていたのが、この極小タンコロなのです。
 手持ちには小さすぎるし、置くのも不安定で心もとなく、不思議に思い、問い合わせてみましたところ、医者でありました先代の話では、また更に医者であった先代からの引継ぎ物で、「ちょこちょこ出掛けるには誠に重宝で、適当な重さがあって、提灯が安定したよ。和ローソクでは芯切りなど、大変煩わしかったろうよ」と聞いていたと、建築家の現役を離れた当時の記憶の底から掻き出した話。
                     Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月12日

小田原提灯(その3)

小田原提灯3.jpg
 ただ何となく眺め見るだけで、「懐提灯」という呼び名がすとんと納得できる、銅の打ち出しで仕上げられた、鈍い輝きを発する、天地の箱蓋の図A。
 丈夫な和紙を固く撚った“こより”で、しっかりと編み上げ、さらに漆で塗り固めた、見るからに軽やかな図B。
 その仕上りの滑らかさや、紙で出来ているとは思えない見事な肌合いを、掌で感じ取りたい衝動に駆られる、とおっしゃる方が以外に大勢おられるのです。
                     Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月09日

金曜コラム

金時応援.gif 暫金時応援隊
 金太郎の伝承地は、全国に多い。
 神奈川県南足柄市には、民話の世界に登場する足柄山に似た「矢倉岳」があり、金太郎の生家や遊び石、産湯に使ったという「夕日の滝」などの言い伝えが残る。
 金太郎のふるさと南足柄の安全・安心を守る防犯ボランティア「暫(しばらく)金時隊」がこのほど、警察庁の「地域安全安全ステーションモデル・全国百選」に選ばれた。
 隊名は、金太郎伝説と悪人を懲らしめる歌舞伎の荒事(あらごと)のひとつ「暫」を人形にした「暫金時」から名付けた。現在、自治会員によるパトロール、犬の散歩やジョギングをしながら犯罪に目を光らす「ながら隊」を含め6隊が活躍している。
  住民パワーに負けじと、市職員組合の有志17人が、超人的な勇気・正義を表す紅隈を取り、隊のキャラクターと防犯活動実施中の文字を染め抜いた幟(のぼり)4枚を縫い合わせた半纏(はんてん)姿も勇ましい「暫金時応援隊」を結成。全国で爆発中のよさこいソーランのリズムに合わせ、市最大のイベント「足柄金太郎まつり」や私鉄駅前で躍動感あふれるパフォーマンスを披露、金太郎のふるさとの安全・安心を全国に発信中だ。(粒)



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2005年09月07日

輝く顔

輝く顔.gif 9月1日の午前10時、秋の涼風と共に、横浜磯子区で、身体に不自由を持ってしまった人達を常に励ます活動を続けている「たんぽぽの会」の方々37人が、颯爽とした気概で入ってこられたのを見て、心嬉しくお迎え致しました。
 皆さん既に、8月26日12チャンネルで放映された『所さんとおすぎの偉大なるトホホ人物伝』での、18分にわたる当館の収録映像を見ておられ、実演で再確認したところの江戸民具の心遣いの広さと深さに、大きな感銘を受けられたようです。
 中のおひとりは、仕事戦士の自分も不自由を持ってから、この会のお蔭で、物をしみじみと見ることが出来るようになり、今日は江戸の人々の思い遣りの心に感動しました、とおっしゃって、ゆっくりと立ち戻られました。
 私と家内共々、楽しくも嬉しい、心豊かな1日となりました。
 Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月05日

9月を迎えて

歓迎門1.gif ようやく涼風が立つようになり、館の少し先は、青々とした稲穂が波打つ田園です。あとわずかで、黄金の波に変わります。
 今月は、信州松本の『押絵雛』でお迎えさせて頂きました。引き続き灯火は、小田原提灯を主に、時に近況報告を織り交ぜさせて頂きます。
 早速ですが、今月7日・8日の両日、富山市科学文化センターの渡辺・布村両先生をはじめ、富山大学の市瀬先生、立命館大学の尾鍋先生方が、当館で展示の、天文時計「垂揺球儀」を活用した文政8年の『正時版符天機』の調査に来館されます。
 この2日間は、1階の広間展示室兼休憩スペースを調査に専用されますので、ご見学の方々には、この2日間は外して頂いた方が、ごゆっくりと隅々まで御覧頂けます。
 Antique Museum 江戸民具街道館長 秋澤達雄



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2005年09月02日

金曜コラム

早川駅.gif 東海道の小駅
 JR東日本のテレビCM「駅どきnet」に東海道線「早川駅」(小田原市)が登場。
 新しい出改札システムで使用されるICカード「Suica(スイカ)」のイメージキャラクター・ペンギンとタレントの西原亜紀が、温もりのある木造駅舎と青い海をバックに小さな旅を演出している。昭和50年代、国鉄が一大キャンペーンを展開したディスカバージャパン山口百恵の「いい日旅立ち」を思い出した。
 早川駅のロータリーの一角には、「日本で一番駅に近い港、小田原漁港、徒歩1分」と刻まれたサーフボード型のモニュメントが建っている。
 早川駅からひと駅下ると、昭和28年1月に詩人、茨木のり子が「根府川の海」に詠んだ根府川駅がある。
 根府川/東海道の小駅/赤いカンナの咲いている駅/たっぷり栄養のある/大きな花の向こうに/いつもまっさおな海がひろがっていた……。
 ノスタルジックな駅舎の先には、50年前と同じまっさおな海がひろがり、赤いカンナに代わって、セミがせわしく鳴いている。
 小駅は時間(とき)を超え、語りかけている。              (粒)



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